のし餅 和田まさ子
十二月三十日
着物の袖のような
のし餅が届く
でもすぐに切らない
少し置く
すると固くなっていき
これが切り頃という時期をうかがう
始まった
餅を切って
大根を切って
交互に切る
餅を切るときの力の入れ加減
大根を切ったときに水分を包丁に吸わせる呼吸
見事な見世物で
熱中している
するとネズミが
天井で走って
走り回って
うるさいから
黙れと餅がいい
静かになった天井見上げてから
いよいよ熱心な切断
腹をぐっとね
立てた餅に体重をかけて
ほらこうすると
真っ直ぐにきれいに切れるでしょ
ほらこう
ほらこうすると
ねえ、おかあさん
それ、ニンゲンの腕だよ