のし餅   和田まさ子

0312

のし餅   和田まさ子

十二月三十日
着物の袖のような
のし餅が届く
でもすぐに切らない
少し置く
すると固くなっていき
これが切り頃という時期をうかがう

始まった
餅を切って
大根を切って
交互に切る
餅を切るときの力の入れ加減
大根を切ったときに水分を包丁に吸わせる呼吸
見事な見世物で
熱中している

するとネズミが
天井で走って
走り回って
うるさいから
黙れと餅がいい

静かになった天井見上げてから
いよいよ熱心な切断
腹をぐっとね
立てた餅に体重をかけて
ほらこうすると
真っ直ぐにきれいに切れるでしょ
ほらこう
ほらこうすると

ねえ、おかあさん
それ、ニンゲンの腕だよ

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