内戦(その4)   野村喜和夫

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内戦(その4)   野村喜和夫

(共謀なき共謀のためのテーゼ)

俺ら、
無言のうちに、跳ぶ、
はねる、襲う、

そのリズム、
その神聖な狂気、
もしそのようなものがあるとするなら、
希望より百倍も強力であろう、

俺ら、
よくわからない、
むかし、せいぜい天気予報ぐらいだと思っていた株式市況が、
いつからか、あたかも、
古代の神託のように幅をきかせているのはなぜか、
俺ら、どうしてもよくわからない、
ただの数字ではないか、

俺ら、
夢見るぞ、
崩れやすい断崖絶壁のうえ、
そこになにかを築くことはできないが、
そこからの眺めは最高であるような、断崖絶壁のうえ、
夢見るぞ、

俺ら、
何も計画しない、
また何も約束されていない、
ただ賭けをするだけ、
競馬場に身を置いたときのような、
いま俺らを襲う、えもいわれぬすがすがしさは、
そこに由来する、

俺ら、
日の当たる場所、
そこから引き離されているだけに、
見える、地を亀裂が走っているのが見える、
そこを覗くと、さらに深いところから、
内戦、という語が、
セピア色の表皮を剝かれて、
思いのほか新鮮に、浮かび上がろうとしている、
錯覚か、俺ら、
眼を凝らすが、内戦、
という語は、たしかに浮かび上がってくる、

俺ら、
不穏な脊椎、
ゆらいでいて、まぎれもなく曖昧にして模糊、
それでいて強くしなやか、
俺ら、不穏な無脊椎、
あるいは狂う蛾のような泥、
ひっそりと粥のような、人のうしろでうすうすと始まる、
なにか化け物めいた存在の交尾のような、

俺ら、
負け惜しみで言うのではないが、
敗者には勝者にはない尊厳のようなものがある、
俺ら、そこに駈ける、
賭ける、

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