ながい会話    川津望

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ながい会話    川津望

腹のなかは遠い慟哭のような青空だ
消化するものは音もなく歩行の断面をつくる
毛深い死臭の倒れるひだのあいだ
細菌類の細部のながい会話は溶けてゆく
口のない裂傷を泥濘として繁殖期
千の腕が眠っている 
千の足が眠っている

身のうちの座席をゆずると
地層やじんるいは流れてゆく
すべての顔のうえで明けてゆく夜
そんざいのへりは褪色しざわめく
しるしただけでかゆい深層だ
過ぎ去ってゆくまなざしに押され
まつ毛のふるえのうちに淘たされた鳥のはばたきを聴く
しかぱー しかぱー
ぜつめつした部分のりょう眼視さが表層へ移どうする
声がするところにからだを撒いてしまう
そうやってかさぶたへかくれるよりも
重い飛行でしかみつめられない
集まって 眼球が風にさらされる

遊泳しよう 舞いあがる塵を透めいが跳ね
遊泳しよう 鼓まくの化粧を担い
遊泳しよう 彼方 海ていに沈んでいた電信柱がヌックとおきあがり

ハロー ここは道だったんです
孫の手がかいてくれたので
思い出すことができました
あなたの姿もみえませんが
血液中で映写機はうごかず
数になったひとびとが
波打ちぎわ翼の生えた非常階段をまわって

人声は根よりふかいところで
確かめられないほどやせている

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