落下    佐峰 存

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落下    佐峰 存

外は肉眼で見えない火の粉で満ちている。
内側では切り立った表面から、河岸が滲み込んでくる。

漆喰の壁から 曇り空
色が詰められた 部素の幕で

海を隔てた人の声、
重なりの直中から煙が漏れて、肺が渇いた。

金具を解除し窓から手を出すと 奥は濡れていた
指を動かし 浮遊する

雨の降り出した近所の交差点は、
気配で裂け始めている。

若葉の波が膨らんで 鼻腔が熱くなった
巣窟の機材は 名前と 指紋と 角膜で反応し

とめどない事象で陽を萎めていく。未だ触れていない顔から、
画面の合図と共に呼び止められる。

また騒ぎが起きた
らしいよ 手元に映像がある

甲殻で身を固めたファイルが届くと、
溢れそうな爪、花弁の形をした暗号で白地を埋めた。

ひらかれたのは かの十字路
どこからか 隠者をやめた集会が 凝視している

先では、鉄の匂いのする窓が、
限界まで開け放たれ、

見覚えのある腕が飛び出ていた
手首から指へ 大きな布が垂れていて

端から焔が上がると、
たちまち掴むようにひろがって、重さを宿し落ちていった。

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