al dente    箱森裕美

D42402E0-2D9B-42C3-93E2-3F5F592596C0

al dente    箱森裕美

角が多くて角があるたびに曲がり曲がるたびに
自分はひとでなしになります。頭頂から水が噴
き出して眉毛が薄くなり歯と歯がミルクみたい
に流れ落ちて指が一本ずつくっついてゆく。

道をともにしているひとはそんなことないのに
自分だけどんどんとそうなっていくので恥ずか
しい。はずかしい、と、出した声はすでに電子
音となっておりはは。笑い声もなんの感情もあ
らわさない。のだけれども身の内の恥ずかしい
気持ちは継続している。

角が多くてたくさん曲がるから曲がるたびに自
分はひとからどんどん遠ざかります。陰毛がと
ろけ臍が埋まって首がゆっくり回転しはじめ脚
がひょろひょろしすぎて歩くのに難儀する。

道をともにしているひとが自分のストローのよ
うな手を取り引いてくれる。触れているところ
をかすかに吸い上げてしまう。鼻が顔の中にう
ずまって立ち込めていた銭湯の湯気のにおいが
消えた。が湯気のにおいはまだ眼球のあったあ
たりにメモリとして残っている。

   あたらしいじゅんばんでいい?
   あたらしいじゅんばんでいい?
   あたらしい
   あ
 耳はもうつるりとして聴こえないはずなのに
 雑音が からだのなかをなみうって、

角が多くて自分はますます変わっていき伸びて
いきふやけます。あたたかくて、中に髪の毛一
本ぶんの芯のある半透明のひもになっている。
ぬらぬらしているから細くなっても絡まない。

道をともにしている人は自分の手を引くことも
できなくなり抱える。そうまでして曲がらなく
てもいいのだけど、と思う。ひとりで曲がって
くれたらいいのに。なあ。抱え方が雑でどんど
んこぼれる。こぼれたのがもっと前にこぼれた
のと地面で重なる。のに消えずに積もっている。

   ねえけっきょくおなじところを
   ぐるぐるしてるだけじゃない?
言いたいけれども もうないからさあ 舌が、

箱森 裕美(はこもり・ひろみ)
1980年栃木市生まれ。俳句結社「炎環」「紫」同人
詩歌俳同人Qai<クヮイ>所属

タグ:

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress