第7回詩歌トライアスロン三詩形鼎立受賞(連載1回) 凪と息    未補

2

第7回詩歌トライアスロン三詩形鼎立受賞(連載1回) 凪と息    未補

空を剥がれた産声を
地上では雪と呼ぶらしい
ここではいくら花を買っても
透き通るばかりで
あしたの夜を見つめ返してはくれない

誰のまぶたにも
溶けない螺子があるので
我先にと海は青く塗られる

(湯気のかたちをした弔旗)

地図のとおりに
砂漠を切り取れば
完全な人型になった
その影につまづいた数だけ
名前は空へ還っていった

前世で古物商だった恋人から窓枠を買う
鳥たちが口移す航路に映えて
ひどくたよりない

(葉はまばらに凪ぐ)

背骨いっぱいに敷き詰めた星々を
二足歩行の蝉たちが踏んでいった
とうめいの毛深い脚が
捨てられた心音を
完璧に縁取った

まどろんでしまうと
白さはたちまち梨を逸れて
きのうの朝に消える

(あるいは幾年かの退屈)

縄梯子のように垂らした片足は
ようやく白木蓮に触れた
録音されたトルソーの吐息のように
記号的に
ただそよぐ
それでいて散らない

ここへ来る前に見つけた
虹に加える八色目を
たしかにとっておいたはずなのに
とうとう両目から溢れてしまった

眩しさのせい?
いいえ
人の仕業のせい

タグ:

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress