死声1の1 森川 雅美

死声1の1
森川 雅美

人が街の中で燃えている
人が街の中で影になる
崩れていく人たちの声の
つま弾く旋律に交じり
私の首筋にまで落ちいく
大地に倒れる掌の内の
まだ温もりの残る脈拍の
すでに消えた連綿
とした途切れない列の罅割れ
私の失われた足の細る
遠い境界に鈍く光り
繰り返される祈りつづけた
人が眼の中で燃えている
人が眼の中で影になる
私の記憶は遅れいく
焼け続けている人たちの声の
早まる旋律に集い
深く抉られた魂の淀みに
たゆたう記憶の残像を
私の失われた意識が辿る
絶え間なく綴る指先に煌めく
小さな囁きは解け
二度と帰れない道の途上
で振りかえる柔らかな
私のかたかたと鳴る体だから
人が傷の中で燃えている
人が傷の中で影になる
潰されていく人たちの声の
途切れる旋律に傾き
私の愛した人たちの失われた
残忍な眼に見詰められる
地面に貼りつく手足と
追われるばらばらに動く
細る血管の内側に跳ね
私の小さな悲しみの流れ
遺棄される名前の捲れる頁
や遠くに伸びる翼や
人が音の中で燃えている
人が音の中で影になる
私の静かに歩きつづける
まだ倒れない人たちの声の
血を流す旋律に留め
誰かの記憶の柔らかい光
に満ちる川のほとりも
私のさらに細くなる
通り過ぎていく愛しい人
たちの後姿も風に加え
消えない足跡の途切れずに
呼び出される半身は

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