三面鏡 川口慈子

  • 投稿日:2012年12月21日
  • カテゴリー:短歌

三面鏡

どこ向いて座ってもいい困ったら部屋でほほ笑む熊手のおかめ

啄木鳥にためらいはなし嘴を絶対的にただ繰り出せり

胸元に真珠を飾る私の口紅の色いくたび変わる

恋人と母はどちらが強いかと考えながら食べるミニパフェ

一筋の飛行機雲のはじまりも終わりもない線指でなぞりぬ

逢うという約束は物質のごとあるのみラッコと鼻突き合わす

私の集中どこから来るものか部屋にくぼんでいるビール缶

君の眼鏡かけてぐんにゃりする世界指先だけをつなげて歩く

脱皮して走り続けしゴキブリがビニール袋の中でも走る

三面鏡に表情しだいに変えながら向日葵が水吸い上げている

作者紹介

  • 川口慈子(かわぐち やすこ)

かりん所属。第五十一回短歌研究新人賞次席。二〇一〇年かりん賞受賞。  

タグ: , , , , ,

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress