風警報     広坂早苗

  • 投稿日:2013年11月22日
  • カテゴリー:短歌

広坂短歌131122

風警報     広坂早苗

ひんやりと海上風警報の朝 黄葉(もみじ)ふりやまぬ街路をあるく

希臘(ギリシャ)からわが名を呼べる絵はがきに星座のような文字光りおり

さやさやと風にそよげば冬青(そよご)という葉はつややかに光を弾く

わが生に冬青のような一日のあれ風にあらがい尖れるみどり

南吉の恋を思えば曼珠沙華火を噴くごとき矢勝川(やかちがわ)見ゆ

いいわけをメールに載せて送信す胸もと冷ゆる秋の夜の更け

夜の空をひとひらめくり仕立てなば喪の服は身にやさしかるべし

逃げ水のごと遠ざかる晩年か死は夭き日に親しかりしを

スカーレット・オハラの無知と驕慢をかなしみながらたどる終巻

封を開け折り目をひらく時の間もやさしいあなたからの手紙は

ものうげな白きまぶたのひらひらと降り積もるなり福島は雪

職場より送りし一太郎ファイル居間にひらきて業務をつづく

作者紹介

  • 広坂早苗(ひろさか さなえ)

1965年生まれ。1986年に活動休止していた「早稲田短歌」を復刊する。
「まひる野」所属。歌集『夏暁』(2002年) 

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