だるんだるん   加賀田優子

  • 投稿日:2017年06月03日
  • カテゴリー:短歌

加賀田短歌

だるんだるん   加賀田優子

たんぽぽを折るのとすごいわるくちをいうのとではどっちがひどいだろう

さからっているんじゃなくてみんなただもといた川に戻りたいだけ

海がわのホテルの壁をぬりかえるおにいさんたち灰色の服

運転手さんの鼻歌がとぎれないようにねむったふりをつづける

無理しなくていいよ、いいよ、といいながらまたセックスをしている夢だ

欲しいものリストにとくに欲しくないものがぽつぽつと混ざっている

なくなった幼稚園には花のさく木ばかり残されていてまぶしい

ドアすこしひかってたから開けるときありがとうっていってしまった

みつ豆の缶でつくったおもちゃにはしばらく蟻がこびりついていた

くじけそうな日にきこえてきてしまう秘密兵器をだすときの音

だけど庭それは崩壊寸前の血だまりに似ている花と花

首元も袖口も裾もだるんだるんだるんだるんした服をきてゆく

暑いらしい最高気温を一度二度三度くりかえすテレビの声

たべものを見ても退屈そうにする動物たちをながめにいこう

口うつしされた輪ゴムがどうしてもどうしても輪ゴムの味がする

加賀田優子
1990年生まれ 「なんたる星」所属

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