それなりでそれなりに   伴 風花

  • 投稿日:2020年02月02日
  • カテゴリー:短歌

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それなりでそれなりに   伴 風花

選ばなかったほうのわたしは
いくつかの選択がありときどきは選ばなかった私をおもう
一番じゃなかったけれどそれなりでそれなりに楽しくてうん、たのしいよ
どうしようもなく好きだったのに忘れてたどうしてるかな冷えた手のひら
目のまえの毎日がそれは毎日続くからそんな毎日がもう十年だ
白菜をめくればいっぱい虫がいて挨拶しちゃえるんだからしあわせよ
未来を信じることを信念として
キッチンで食器を洗う手が止まる世論調査の数字を前に
わからない理解できない何十年「普通」と思って生きてきたのに
選んでもいない列車に乗せられてこのまま何処へ子を抱いたまま
塵だけど塵にすぎない一票を積みにいくしか方法はない
プロ野球選手になる、と言い切った次男の短冊 投票に行く
泣きながら三人の子を抱きしめる義務も権利もなく抱きしめる
諦めない絶望しないきみたちの手から生まれる未来を信じる
すこやかに日々を
すこやかに男児三人育ちおり波うち際のようなベランダ
タピオカがのぼっておりてのぼりきるたびに子どもは目を見ひらいて
みつかって開花のように笑う子の私もきみに会えてうれしい
好プレーだけを何度も見るきみに小学生の私がおどろく
オーライ!と短く叫び白球を冬の空から奪り返すきみ
同級生にもいたなそうしてシャーペンを分解してはぼろぼろこぼす
鉄棒は地軸 あなたが空を蹴るたびに地球はわずかに動く

伴 風花(ばん・ふうか)
歌集に『イチゴフェア』(風媒社)。Twitterにいます。

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