あの国の海を見てみたい    鈴木 智子

  • 投稿日:2020年08月01日
  • カテゴリー:短歌

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あの国の海を見てみたい    鈴木 智子

咲きなさい 言葉は交わすものだから 光る入り江へ迎えに行った
うみ、とあなたが呼ぶときに記憶の中の青いブラウス
この橋を渡った頃に真水へと戻るにおいに寂しさ揺れる
雨、レイン、バランと言葉を選ぶとき空は孔雀の羽のようだね
城跡にノウゼンカズラばかり咲く 次に滅びるものを教えて
県道に色褪せているガーランド揺れておまえは何を迎える
さらさらとシルクのような夏の夜が頷くように安眠を呼ぶ
この場所にオゾン層などもうなくて浴びれば焼ける言葉の強さ
いつの間に私の裡に建っていた噴水上がる 心でしょうか
森の青 海の青とを見比べて絵の具を混ぜた 永遠に島
首に薔薇模様の傷を携えて歩くビル街風が涼しい
泣きじゃくり歩いた道を覚えてね生者の国に咲いたサルビア
百年後わたしの声が残ったらこの賭けは勝ち ドレスで眠る
リスクなき人生をもう選べないあの国にある海も青いか
行かなければ 東の方に海がある 付箋まみれの本を抱いて

鈴木智子
1986年生まれ、茨城県出身、在住。歌人集団かばん所属。2018年第一歌集『砂漠の庭師』発行。
『茨城県短歌アンソロジーあおなじみ』シリーズ他。現在『異国短歌』の編集人を務める。

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