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舟を押す     八木忠栄

詩歌トライアスロン八木詩140413

舟を押す     八木忠栄

夜明け前 おれは
凍りついたままの水門を背に
丸木舟を押して川をさかのぼる
エイ、コラ、エイ、
ひとりでゆっくり押す
家々はまだ寝息をたてている
舟のなかには冬の風のかたまりが
いくつもころがりこんでいる
それをどこまで届けるのか
おれは何も知らない
知らないまま ひたすら丸木舟を押す
風はときどき激しく咳きこんで白濁する
そのぶきみな美しさ
明るい橋や暗い橋をいくつもくぐる
橋下で水鳥がたわむれる夢の切れはし
どこかの路地で火を吐く犬
地上はけものみちに身をゆだね
今しばらく眠っていてほしい
川のながれは冷たくとがる
いつだって おれは
小ぎれいな希望など信じない
山なみをゆさぶる夜明けだけを信じ
息ととのえて丸木舟を押す
風がまた咳きこむ

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