◯とdot. 亜久津歩
「団栗を百個拾つたはうの勝ち」
袖まくりすぐに服脱ぐ秋野かな
今にも抒情されそうなこどもたち
無防備な夕陽もまた歌われようとしていた
秋の五時は夜だねと言ふボール蹴る
順番が来てわれに返る
ほんとうに運がよかったから転がってきた
青痣めく黄昏に抒情されてしまった母の
上顎のかたちに闇は鎮もり
育たなかった言葉を待っている
しあわせものによい絵は描けないよ
と言った兄に婚姻を祝われたこと
女性詩人と呼ばれたこと
万年筆を突き刺しても平凡だったこと
順番が来てわれに返る
こんなにしあわせなのに
ばいばい、と言い合い色とりどりに
乱反射するパレード
まだ よまなくていい
コーン残るコーンスープや二日月
さめるのがはやすぎるよ
滴り落ちた舌先に
叙事詩のような足音がした