白に流れる 一方井亜稀
また
ありきたりの朝が来て
コンビニの蛍光灯が光に滲んでゆく通りに
空気は満ち
カタストロフが沈んでゆく
片言を話す人が
自動販売機に硬貨を投げ入れ
音が
響く
空は淡い水色で
その向こうから何が来るのか
かじかむ手は
掴み損ねる感触を
何度も確かめるように
冷えた
ミネラルウォーターの栓を捻る
回転してゆく
ネガの記憶
ありきたりの景色の走馬灯
死が目の前にあるような
白紙という居住区で
立ち尽くす身体を廃墟と名指す
ということはつまり
破瓜
とはぐらかす
解雇はとうに言い渡され
あらゆることが不法になってゆく
認識をはみ出す手前の
母語
を飲み干す喉元の
つっかかりは内包されたまま
側溝に流れる空き缶吸い殻の類
新しい傘は開かれず
ミネラルウォーターの雨を浴びる
街だけが水浸しで
空は晴れやかな日曜
ありきたりの朝は来て
昨日までの部屋
ひたひたと濡れた
真っ白な紙が
淡い光に晒されてゆく