私がこの「詩客」に参加する唯一の理由、それは三詩型が出会う場をつくりだすことによってかならずや面白いことが起こると確信するからである。私自身はとりあえず俳句や短歌の作り手たちと交流し研鑽しあっていきたいと考えている。野心としていうなら、俳句や短歌からその富を盗んで現代詩の創作に役立てること。そうしてゆくゆくはコラボレーションという局面をひらいて、たとえば三詩型のあいだで連詩をつくるとかしてみたいのである。つまり私が詩を書き、それを受けて歌人の藤原さんが短歌を書き、それを受けて俳人の筑紫さんや高山さんが俳句を書く、というようなことをやってみたいのである。みなさんどうかよろしく。それから、批評という面では、近代以降三詩型のあいだでどのような交流が行われてきたかを、詩人の立場から考えていきたい。つまり、歌人とされる啄木が自由詩をも書いた意味、詩歌の万能選手白秋に俳句の実作例が少ない意味、あの朔太郎が短歌から出発し後半生は俳句へと関心を寄せていった意味、などなど。かさねてみなさんどうかよろしく。
執筆者紹介
野村喜和夫(のむら・きわお)
詩人。1951年埼玉県生まれ。早大文学部卒。
戦後世代を代表する詩人の一人として現代詩の先端を走りつづけるとともに、小説、批評、翻訳、朗読パフォーマンスなども手がける。
詩集『川萎え』『反復彷徨』『特性のない陽のもとに』(歴程新鋭賞)『現代詩文庫・野村喜和夫詩集』『風の配分』(高見順賞)『ニューインスピレーション』(現代詩花椿賞)『街の衣のいちまい下の虹は蛇だ』『スペクタクル』、『ZORO』、評論『ランボー・横断する詩学』『散文センター』『21世紀ポエジー計画』『金子光晴を読もう』『現代詩作マニュアル』『オルフェウス的主題』、CD『UTUTU/独歩住居跡の方へ』など多数。