戦後俳句を読む ‐ 執筆者紹介 ‐上田五千石の句 / しなだしん

上田五千石の句

【戦後俳句を読む(0)】

今わたしの手には上田五千石第一句集『田園』がある。平成2年、春日書房から「畦」創刊二百号記念として刊行された「復刻版」、その1,000部の中の一冊である。
真っ青で手触りのある函。函をひらくと白い表紙の本誌とグレーの小冊子が出てくる。
小冊子はこの復刻版に寄せられた”『田園』交響集”である。この交響集にはまたのちにふれることとし、句集を開く。

句集『田園』の一句めは、

ゆびさして寒星一つづつ生かす   五千石

である。
五千石の作品としては語られるとこの少ない句であるが、処女句集の第一句めに置かれた、五千石の意志のような句であると私は思っている。この句にはじめてふれたとき、私は「ああこういう俳句を作りたい」と切に思ったものである。その思いは今も変わっていない。

【上田五千石・略歴】

昭和8年10月、東京生まれ。本名、明男。
上智大学文学部新聞学科卒。
昭和29年、秋元不死男に師事、「氷海」「天狼」に投句、「子午線」に参加。
昭和31年、「氷海」同人。
昭和43年、第一句集『田園』で俳人協会賞及び静岡県文化奨励賞受賞。
昭和48年、「畦」を創刊主宰。多くの俊英を育てる。
平成9年9月、63歳にて死去。
句集に『田園』『森林』『琥珀』『天路』など。
著書に『生きることをうたう』『春の雁』『俳句』『旅と風景句』など。

本略歴は『完本 俳句塾 眼前直覚への278章』から抽いた。

さて、五千石が63歳で亡くなったのは、平成9年である。平成9年は私が俳句をはじめた年。
五千石没後14年。今年は上田日差子氏が第34回(平成22年度)俳人協会新人賞を受賞された。今改めて五千石の俳句をひもとき、「現前直覚」を再考するのもよい頃ではないかと思うのである。

執筆者紹介

  • しなだしん

昭和37年、新潟県柏崎市生まれ。東京都新宿区在住。
平成9年「青山」入会。平成11年「青山」同人。俳人協会会員。
平成14年「田」創立に編集人として参加。平成18年まで同編集長。
平成20年、第一句集『夜明』(ふらんす堂)上梓。
平成22年「俳句研究」第6回三十句競作入選(第1位)。第25回「俳壇賞」次点。
平成23年「俳句研究」「俳誌展望」担当。「青山」当月集同人。

「青山」「田」「OPUS」所属 俳人協会終身会員

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