◆第3回 詩歌トライアスロン準入賞作
アインシュタイン、よく言えば君は星座だ 城前佑樹
宇宙から縁取りを剝げ氷にてしづめるトマト湯剥かむごとく
朝のねざめのうつくしい
今日にあなたを捨てることに
決めた
よこがほは
数A問題集の表紙に似て幾何学
世界はにがく
放射線をじやりじやり噛む
あなたは口をひらかないのに
咽頭には
乱反射するみえない矢の群れ
あなたの舌とわたしの舌と
あなたの下とわたしの下と
が
まさぐりあふのをやめる時だ
から炊きのお釜に里芋をころがして
(毛をたしかめあふのもこれが最後ね)
E=mc²昼寝覚
アインシュタインの尾てい骨には
誰も興味がない
地球から遊離するまったき引力
骨は脳みその事務局
ランチのあと寝落ちするOL
をささえるのはアルベルト、君の舌だ
君はよく居眠りしたさうじやないか
ゆるく組んだ両手に硬貨をしのばせて
イマジネーションからも飛ぶ
鳥を射つたさうじやないか
そこからは明瞭な目玉焼きの歴史
かぱあ、と割って、じゅう、と鳴く
フライパンの事象
アインシュタインの硬貨は
なりえた自傷
あなたのなかのわたしが
なしえた自傷
(革命は緩慢とした面取りだ)
それはただのひと押しによつて
やぶられる家畜の快楽の戸だ
E=mc²ひるねざめ
午後一時二十分のガソリンスタンドにも
煌々と星のひかりは降り注いでゐた
理由などとくになしに
笑ひはじめる
太陽も
星の一派であることに
気づかずに
子どもはガソリンスタンドの横の公園で
笑ひはじめる
瞬間では
相対性理論などなんの価値もない
アインシュタイン、よく言えば君は星座だ
昼の世界では
いや夜の世界だつて
真空の世界に名を刻んでゐるだけだ
天にまします
われらが神
の
子どもは
壊れることを嗜好する
くだらなさのなかに
飼い羊ほどの想像力をもつて
(みづうみは涸れアインシュタイン、よく言えば君は星座だ まなこへの既知)
いーいこーるえむしーじじょうひるねざめ
あなたの
等号がなりたたないやうに
かりだされた菜っきり庖丁の
切れない部分で
牛肉のブロックをたたく
焦燥しきることを
星はえらばなかつた
だんだん宇宙はせまくなる
過程のあなたは
わたしに全く似てゐない
焦燥から縁遠く
アインシュタイン化してゐる
わたしは文字化けのバグを
泣きながらのハグを
避けなければならない
なぜなら
世界は等号では成り立つていないからだ