安心 和田まさ子
りんごがテーブルの上にあり
赤かったのが
どす黒さを
増してきて
尻の部分に
どこで打ったのか
黒いあざができて
それは
腐ってきたということだと
気がついて
どんどん身に悪い気配が迫ってくるから
手が伸びない
指が触れない
りんごが
テーブルにあり
饐えた、けれど甘い匂いが
そこから発散している
行きどころがないと思っていると
部屋が縮み
りんごと
わたしが
二人でいる
まだ生きているりんご
だから
じっとだまっていたら
あなた
腐っている
と
りんごがいう
それでほっとした
腐っている
腐っている
だから
安心して
わたしも
りんごになる
だれかに圧迫されたことで
尻のところから
ゆっくり腐り
いい匂いのりんごとして
崩れていき
果実として終わる