跨線橋   高貝弘也



跨線橋   高貝弘也

夕霧に、空き缶けとばした。 
鳴るあてのない 電話を待ちわびていた 
 
 
いで、 
いま あなたと出逢った 
(いまあやめたばかりの…、) 
 
かみや。かげうら。あの うら淋しい猿投さなげよ。 
かなしい黒揚羽クロアゲハ。小闇の静けさがここまで 
 
 
三度みたび 挿入されている 
(そのままあなたを、呼びかけたままで) 
 
 
 
 
 
忌引きびき、水茄子なすややこ。あわい靈。 
根かたの 屎尿。さわがしい、真っ赤な茗荷みょうがよ 
 
 
白褐色に濁った……あの跨線橋こせんきょうのうえ、 
野の鳥が(しろく)なきたてていた。 
あなたは、しろい耳をそばだてた…… 
 
 
尋ねあっている 頬ずり。貝化石。 
無償のもの あなたの薄弱なる、すがた 
 
 
青灰色の 木靈はねて。躑躅つつじの狂い咲き。 
生き延びたメダカが うらの溝をはしるよ 
 
 
つがいが、(抱卵) 
――露のゆかり… 
あなたは 子をささげている 
 
 
(川向こうのわたしが……、すっと薄くなっている……… 
袋叩きにあう、) 
 
 
愛してる、あなたを愛している 
 
 
とてもやさしい、裏かみ。 
いっきに 肉刺まめが破れている!

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