南紀    花尻万博


南紀    花尻万博

白藤に波放さざる古江かな

すぐに木を移る言霊ひこばゆる

「然り、ただ死し、行け」 バイロン「安らかな死」より

春愁ひ新ラの斧の柄漂へり

磯風に身を巻き直し母猫よ

大和国と紀伊国の国境

果無しの果てのまほらま母子草

葱の花頭大きは俳人なる

いつかは平等に海の底に

耕すは矢面に立つ思ひせり

黒潮の波曳きたがり鳥の恋

長男時季とき授かる、少し患ふ

吾子抱けば春の日傘を笑はれず

溺愛の続き巣燕やも知れず

執筆者紹介

花尻万博(はなじり・かずひろ)

1970年和歌山生まれ。和歌山県在住。

句集参加『現代俳句精鋭選集Ⅰ』(東京四季出版)、『現代俳句100人20句』(邑書林)。

俳句歴20年ほど。

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「作品 2011年5月27日号」の記事

  

One Response to “南紀    花尻万博”


  1. 5月27日号 後記 | 詩客 SHIKAKU
    on 5月 27th, 2011
    @

    […] 今週の作品は花尻万博さん。このところ「南紀」というタイトルでの作品発表が続いています。それは風土的環境からくみあげられた表現でありながら、一方で、極度に繊細で私的な浮 […]

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