翅透きとおる 竹内 亮
八月は嫌いだという人のいて翅透きとおる蝉墜ちてゆく
地下鉄は谷の街では浮上する君の鎖骨に陽が射している
手を上げた君の姿はスポーツの写真のようなストップモーション
終電の後のホームに立っている蛍光灯は端から消えて
夏休みの最後の夜の星空は炭酸水の音が聞こえた
人のいない町の横断歩道には見る人のない信号の青
嗚咽する設定温度を2度下げて冷気わたしの背を静めおり
怒るとき四角く見える人がいるように四角く見える白猫
明け方に話は尽きて熟したるバナナのように眠りに墜ちぬ
旧友は歯科医になってそこに住む アールグレイの匂いの通り