翅透きとおる    竹内 亮

  • 投稿日:2021年10月16日
  • カテゴリー:短歌

1015_2

翅透きとおる    竹内 亮

八月は嫌いだという人のいて翅透きとおる蝉墜ちてゆく
地下鉄は谷の街では浮上する君の鎖骨に陽が射している
手を上げた君の姿はスポーツの写真のようなストップモーション
終電の後のホームに立っている蛍光灯は端から消えて
夏休みの最後の夜の星空は炭酸水の音が聞こえた
人のいない町の横断歩道には見る人のない信号の青
嗚咽する設定温度を2度下げて冷気わたしの背を静めおり
怒るとき四角く見える人がいるように四角く見える白猫
明け方に話は尽きて熟したるバナナのように眠りに墜ちぬ
旧友は歯科医になってそこに住む アールグレイの匂いの通り

タグ:

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress