牛島   中家菜津子

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牛島   中家菜津子

からまることなく
降る糸が
やわらかく
石をほぐす

いつか吸った息と
同じ息を
ふたたび
今日吸いこむとき

肺だけは微かに
分子の
素性を
憶えていて

くちびるで
ひきのばされた
時間は
昨日の歌へとかえり

記憶をもたない
懐かしさが
辺りをいちめん
空っぽにする

千年のうすむらさきの息の尾の小雨に匂う牛島の藤

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