俳句5個、短歌が4個か5個、詩はひとつもないと言われてもしかたがない   井口可奈

◼️第6回詩歌トライアスロン受賞・連載第3回 596F29DA-041D-4C99-ACC1-205B4D2849FB

俳句5個、短歌が4個か5個、詩はひとつも
ないと言われてもしかたがない   井口可奈

[冬の波試し書きするボールペン]「つらい」の下に「わかる」と足して

ゆったりと水盗んでる[わたくしを試すみたいに見てよ水鳥]

ボウリング[ガーターのあとおとずれる冬景色]また派手すぎる靴

ビジネスの街に暮らして[注連飾りひっくりかえす遊びして]夜半

[ひとりしか連れていけない冬の雨]腕の長い子の手が他の子の手よりひ
とつぶん突き出していて、その手を掴んでよいか迷っているおばさんに、
違うよ、その子ではないよ、と心の中で言う
かといってわたしでもない

いっぱいの合鍵がありそこに住んでいるから合鍵を持っている

鏡をこんなに吊るしたのは誰だ
わたしがみんなが何倍にもなってうるさくてしかたない
手が冷たかった
もう冷たくない
ここは人が多いから

いつもひとかたまりでいる
と、思われている
あと窓の結露

むこうがわに寒椿

寒椿の艶をとりだして唇などに塗ったら
いいね、誰かみたいだね
って
言ってくれないか

テレビが点いているので
見ている
見てはいないな
誰も

隣の部屋にはベトナム人のおじさんだかおじいさんだか年齢のよくわから
ない人が住んでいて、歯がほとんどない口を大きく開けて笑う
しょっちゅう大人数の若者を泊めているから騒がしくて
わたしたちはそのぶんひっそりとする

年始はよく晴れるそうだ

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