スペクタクル
高田 ほのか
新しい皿にりんごを乗せる朝白く短い階段がある
あのひとが知りたい指をプレスしてみずうみの領域をひろげる
夕暮れを旋回しながら飛んでいるあれは歌です私のものよ
運勢の弱そうな笑顔で奥側のソファー席をすすめてくれる
あかるさに戸惑いながら抱きしめるハーゲンダッツとはちがう、ぜんぜん
耳鳴りをドライヤーでごまかして綺麗な口もとばかり見ていた
あの人の手紙を待っている夜がいつまでもいつまでも花束
かざされればそれは眩しさ透明な傘の重さがわからなくなる
堪えることと湛えることは似ているねそうしていつも微笑ってきたのね
紫陽花は雨に打たれてスペクタクル 今、今、今をおぼえつづける
占いはしし座の手前で消しましょう画面に浮かぶ白い残像
笑みながら卵をまぜるキッチンのあの鳥はもう帰ってこない
まだ夏にもなってなかった青色の便せんにしたためて投函、
夕闇を孕んだような口づけのどんな表情(かお)をしていたのでしょうか
眠剤の空のシートをさっきまであたたかかったパン皿に置く
スペクタクル 高田 ほのか
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