第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞作 短歌「誤配」俳句「夏の果」自由詩「昼肉/夕骨」 尾内 甲太郎

第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞 
短歌「誤配」俳句「夏の果」自由詩「昼肉/夕骨」
尾内 甲太郎

短歌「誤配」

落ちたのはホイップクリーム 戦争はいつも糖度にまみれていたね

全身の皮膚を雨垂れの撃つようないたみがつつむ 快晴の日は

君いつもトルコ語を言っていたのか「背に背びれある」って魚みたいで

渋滞は海までもつづく 免疫はヒリヒリ疼く風を起こして

庭のすみの深くへ犬を埋めたあと果樹を植えたいできれば亜種の

おとなにはなりたくないと言ったあと凪の海面へタバコをほおる

怪談に出てくるような鏡にはぼくは映ってぼくはいなくて

届いたと思わせといて郵便は南洋あたりを浮かんでいたさ

銀河とかを測る単位で君とぼくはポッキーゲームをしているようだ

泳ぎたい鳥と飛びたい魚いて誰かと話したいヒトがいる

俳句「夏の果」

人類のはじめての語や風薫る

青梅や過去を消されし万歩計

さぼてんのはな腹筋を響かせて

世界線aからbへ平泳ぎ

ひまはりや数式はみな空を描く

さみだれの川へ刻みしパスワード

星座より一列に降る兵士蟻

ジキタリス麒麟の意味を知りかけて

音階を目玉の昇る雲の峰

ヒトの世の終はりの南風やラヴソング

自由詩「昼肉/夕骨」

肺を海があふれて
のどは星屑に詰まる
山にもうひとりぼくがいれば
ダイジョーブだよ
って言っただろう
羊歯の声音で

札束を紙切へ
書き換える仕事のコツは
未来を忘れる夜
過去を編みだす朝
準優勝は優勝じゃないのに
準社員は社員で
歩き鯨の汗は
砂へ置き換わる
浜辺の国が
波に崩れるのを
夢に見ていいのは
何世紀後の晩夏
人新世のさざ波

骨を肉が覆わず
肉が骨をかたちづくる惑星で
焚き火も
数式も
膜でしかなかった
太陽系軌道の
日々のずれを
目尻をつたう水がごまかす
海へ還るまでが遠足なら
玉葱はおやつにふくまれた

水溶性の管楽器
夕焼けは惑星の
    肋骨だ

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