音の羽 @140428    萩原健次郎

詩客 20140510 自由詩 音の羽 萩原健次郎1詩客 20140510 自由詩 音の羽 萩原健次郎2

音の羽 @140428 萩原健次郎

吐き出された、枯葉
吐瀉された桜花
樹脂の管を通って
もう、死んだ、色は、闇の洞から
外に出た。

景色の蘇生とは、このように突如として始まり、それ
から、平板な景として瞬時定着するだけで、また、一
景に翻って、もう一度
誰かの、眼の中で死ぬ。

備忘ならば、それでいい。
記録でもいい。
ちゃらちゃら紅に、憂鬱な緑陰に、
べったりと伏して
唄ならば、横向きに唄い

吹き出しの
 ららららみたいな、文字を嵌められて
そこでも瞬いていればそれで済む。

掃けよ
竹箒、もっと乱暴に押しやれよ、熊手と
考えていても、吹き出しの、ららららは、もう
摺られた液も凝固して、照らされていらあ

昭和十二年と言ったか、
十五年と言ったか、
この川の上から、紙片が流れてきて
私は、通知された。
四月二十三日と、書かれていたか
溢血と、記されたか
昔のことだ。
私は、通告された。

溝に掃かれ
排水溝の穴を通って
枯葉の裔であっても本望ではないか。

社の脇の石柱には、
明治二十三年、
行幸、
移築、



血栓
裂傷

とか、見えても、

それは、生きた人が書いた文字の筆跡ではなかった。

            (「音の羽」連作のうち)

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