紅水 中畑 智江
ペン持たぬくせにペンダコある人の遅れて届く残暑お見舞い
おだやかに離れつつある人なればゴムの切り口みたいにやさしい
夏の匂い縦割りすれば赤赤と滴り落ちて西瓜と気づく
先のことばかり気にするお守りに今を生きろと言ってやりたい
抽斗は多いが多いだけという人に向かえばがらんと疲れる
真直ぐなるナナメノキには真似したくなるような癖きっとあるはず
出がらしのドリップコーヒー、塵箱より今すぐにでも飛び立つ形
飴色の夕闇しっとり降りてきて亀裂がどこかもう分からない
離してはいけないはずの手を君は傘の柄くらいに思っていたか
氷イチゴ食みつつ紅の水になるわたしとあなたは女ともだち
作者紹介
- 中畑 智江(なかはた ともえ)
1971年生まれ、H20中部短歌会入会
H24、第五回中城ふみ子賞受賞