萩の庭、夕食の前     棚木恒寿

  • 投稿日:2012年09月28日
  • カテゴリー:短歌

萩の庭、夕食の前  棚木恒寿

傍らで萩盛り上がる昼の径 ()うだという眼に少年は来る

滅ぶ前のように白萩咲く庭をわたしも人も賞でながらゆく

大気圧肩に置かれいている朝ぞわがからだ秋にふちどられゆく

まことしずかな空にしあれば人間の脚のごとくに虹は残れり

無花果に啜られていしはわが口か寝ねんとすれどなお口ひらく

秋の雲にも重力はかかるということを萩咲く寺で思えりき、しばし

冷えている眼鏡フレーム双子のままおじいさんとなっているふたりの

周到に来ている秋と思うときどっとあふれて彼岸花咲く

腰高の万両に実は灯りいてけじめもあらず午後が更けゆく

秋刀魚を買って帰ると君よりメール来て止まっていた青鷺を動かす

作者紹介

  • 棚木恒寿(たなき・こうじゅ)

一九七四年香川県生まれ。音短歌会会員。歌集に『天の腕』(ながらみ書房・二〇〇六年)がある。

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