朝のラジオ   後藤由紀恵

  • 投稿日:2012年10月19日
  • カテゴリー:短歌

朝のラジオ     後藤由紀恵

彼岸花に白と黄色のあることを朝のラジオに耳は聞きおり

ちちははと暮らすむかしの家なれば朝の網戸にしずかなる蜘蛛

待つ人のなきバス停にしばらくを止まりて秋の光を乗せて

ああ空が高いねすごく遠くまで来てしまったねと彼岸花わらう

また皆で会おうと送るメールにはやさしき雨の秋の返信

うんめいはこわいことばと十月の蝉のまばらに庭に死にたり

いっときの優しさのみで出来ているひとの言葉をくり返し読む

捨てたのか捨てられたのか茫然と夜の廊下にうずくまるもの

トイレにて会釈を返す少女らの膝下ながきをしみじみと見る

胸すこしひらいて秋をうけいれる彼岸花咲く土手をゆくとき

作者紹介

  • 後藤由紀恵(ごとう ゆきえ)

1975年愛知県生まれ。まひる野会会員。歌集『冷えゆく耳』(ながらみ書房)

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