時のみぎわ 米倉歩

  • 投稿日:2012年11月23日
  • カテゴリー:短歌

時のみぎわ 米倉歩

         

閉まるとびらに刈られるわたし切り口を鞄でかくし息ひとつ吐く

中ほどに進めば縋るものはなしイデアのように吊り革がゆれる

じりじりと圧死の文字が迫れるを男は本を開かんとする

制空権握らんとして本とわが頭とせつなくもせめぎあう

拉がれているわたくしの最果てに爪先はあり みぎわに触れる

ゆるぶいとま持ちえぬ日々よ霜月は阿武隈川の青澄むころか

とびら開けば体はわずか浮きあがり現世のほうへ押し流される

にごり水溜まったままの目に見上げいつか銀杏が色づいていた

あさなぎの海に貝殻拾うよう 冷えた机をひとつずつ拭く

かたち変わるほど愛された日々はるか朝の水に水のつめたさ

作者紹介

  • 米倉 歩(よねくら あゆみ)

1968年、宮崎県生まれ。「まひる野会」所属。日本語教師。

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