見るのみ 五十嵐順子

  • 投稿日:2012年12月14日
  • カテゴリー:短歌

見るのみ

                         

病院の窓に夕富士 点滴台引くひと付添いのひと等寄りあう

逆光のなかに濃くなる夕富士が何かこらえ難きものを揺さぶる

さまざまな管をよけつつ抱き取れば頼りなきなりみどりごの嵩

七か月の小さき肺がたたかうを計器に見つつ見るのみに過ぐ

ごめんなさいこの世は難儀なところにて嫌がる酸素マスクも当てる

酸素足り乳足り眠り足りるべくただおろおろと願うばかりに

絶え間なく泣き声聞こゆる小児病棟泣きたき親もそこに居るなる

救急車着きし気配す寝付きたるばかりのみどりごまなざしにかばう

夕暮れはともに待ちおり汝の母 働くすてきなお母さん帰る

わが(いだ)くハナが身じろぐ病院の長き廊下に母を認めて

作者紹介

  • 五十嵐順子(いがらし じゅんこ)

一九四八年新潟生
一九六九年より 「歌と観照」所属 現在発行人・選者
           「獅子座」同人  

一九九四年  歌集『連鎖』 ながらみ書房
二〇〇〇年  歌集『I miss you』 ながらみ書房
二〇〇八年  歌集『Rain(レイン) tree(トゥリー)』  ながらみ書房

現代歌人協会・日本歌人クラブ・十月会会員

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