愛憎家 鎌倉千づる

  • 投稿日:2013年02月15日
  • カテゴリー:短歌

愛憎家 鎌倉千づる

おおぞらに震える木立指差して母よ私は今日町を出る

負けにゆくただただ無意味に負けにゆく嗚咽が星屑に変わる夜

窓辺には頭を垂れる寒椿いつ何時迄にきみ誰が為に

見せる用の青痣ばかり作るならいっそ魅せようこの血飛沫で

好きと云うたびに何かが削れてく蜘蛛の巣を編む夏の夕べに

地下鉄のくるぶしねぶるぬるい風無数の私がちぎれゆく昼

ミルクチョコレートに語る午前二時愛のふりした因果のことを

熟れ落ちて潰れた果実拾う朝「確かに私は愛されていた」

泣き声と鳴き声の区別失くした日暁の色だけが消えない

今日もまた死人ばかりが美しいだから私は泥だって呑む

作者紹介

  • 鎌倉千づる(かまくら ちづる)

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