しばらく覗く 染野太朗

  • 投稿日:2013年02月22日
  • カテゴリー:短歌

しばらく覗く 染野太朗

アボカドを握っては置く熟したるたった一つを見つけるために

西友のレジ袋(M)2円なり買うとき今日は怒りが湧いた

塩水で色止めをするあやうさに人を恋いたり 不味いりんごだ

両脚をこたつに伸ばし「夜の梅」なる羊羹をしんしん食べる

超音波式加湿器のしずけさに鼻近づけて鼻を濡らしぬ

釦すべて留められてあり首のないマネキンが着る学生服の

テロップに交通情報流るるを音消して見る マツコが笑う

粉末のココアを溶いててのひらでカップを包む しばらく覗く

   *

百目という妖怪ふいに部屋に来て鏡をくれと叫んで泣いた

さびしさが地蔵のように立っている怒りがそこに水を供える

作者紹介

  • 染野太朗(そめの たろう)

1977年生まれ。「まひる野」所属。歌集『あの日の海』。

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