さくらさく夕暮れ 富田睦子

  • 投稿日:2013年04月26日
  • カテゴリー:短歌

短歌富田130426

さくらさく夕暮れ      富田睦子

遠きひとますます遠くさくらさく夕暮れひくく銹びる欄干

余韻とう言葉をもたぬわが少女一途に説きぬビー玉をもて

ティファールのアイロンはよしシュウシュウと霞の立ちて春は滲めり

きぬさやのさやの響きを愉しみて湯よりあげれば湯気立つわが子

つきとおす嘘に似ていて母という偶像しんと身にまといおり

散り際のさくらに黒き顔のあり顔あまたあり痛しゆうかげ

ささくれがやがて尖りてくるまでの夕暮れなりき 花びらを踏む

ひとひとり「ママ友」フォルダに振り分けぬ鱗と鱗を響かせながら

平日の回転寿司に経産婦ばかりの女子会非常によろし

春熊のわがむき出しのエゴイズム母性と呼ぶか地震(なゐ)怖き夜

裏返すような青空さえざえと褒められたきとうわれの禁錮(きんこ)爾(じ)

作者紹介

  • 富田睦子(とみた むつこ)

1973年愛知県生まれ
まひる野所属

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