なにかと四月   藤島秀憲

  • 投稿日:2013年05月17日
  • カテゴリー:短歌

短歌藤島130516

なにかと四月  藤島秀憲

まわり道したるがゆえに根津神社の裏に拾えば桐の花なり

躑躅(つつじ)とてはつか匂うと咲く花に顔を寄せればわが顔も寄る

長めなるうたた寝せしも弁慶は勧進帳をまだ読んでいる

花道の七三(しちさん)に来て弁慶がしばらく幸四郎に戻りぬ

しゃぶしゃぶと肉を揺らせる箸二膳不出来な鏡獅子のごとくに

次の世は短い髪のよく似合う女に 傘をひるがえす雨

引きずれる足をあわれと見ていしが芸のパワーは足を隠しぬ

多摩川の水くろぐろと流るるに現役のまま生涯を閉づ

芸人がみずから命たつたびに〈かつて〉〈こんな〉と思い出されん

日曜の夕べ主題歌流れおり四月は使い過ぎるなにかと

作者紹介

  • 藤島秀憲(ふじしま ひでのり)

1960年、埼玉県出身。「心の花」所属。
歌集『二丁目通信』『すずめ』。
「短歌研究」にエッセイ「短歌と笑い ときに寄り道」を連載中。

タグ: , , , , ,

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress