愛について     徳高博子

  • 投稿日:2013年06月21日
  • カテゴリー:短歌

徳島短歌130621

愛について     徳高博子

そのまろきましろきもろき殻ゆゑに愛されもする卵といふは

沈丁花しるくにほへる雨後の道 木蔭から不図わが名呼ばれき

朝川にあぎとふ真鯉 ねもころに話してみれば分かりあへるか

応へなどあるはずもなき深淵ゆエコーまたエコーわが立ち尽くす

踝まで流れ来れる夕霧の冷えおのづから芯に及びぬ

紫紺地に白き椿の塩瀬締め別るるために人と逢ひにき

零れくる桜はなびら享けむとし双手はかなく空を泳がす

ラファエロの聖母子像をつつみたる香気のごときを愛と想へり

正教の十字架の謂知りしよりわが黄泉の国いよよ昏しも

シャボン玉の行方は追はずひたすらに飛ばしつづけるクピドの瞳

伝説となりにし人ら集ひたる《聖会話》のごとき星空の絵図

愛と哀その実ひとつとおぼゆれど逢ひを重ねむ薔薇の下にて

わたくしの息の詰まつた風の船 しましただよひまなく沈みつ

鶏卵大の腫瘍摘出されし痕ときに涙のごときが滲む

折れさうで折れしことなき芯あればあしたにたうぶ みづ 麪包 リンゴ

作者紹介

  • 徳高博子(とくたか ひろこ)

1951年 東京生れ
2000年 短歌研究新人賞候補
2001年 第一歌集『革命暦』(雁書館)上梓
2012年 第二歌集『ローリエの樹下に』(砂子屋書房)上梓
 「玲瓏」「未来」「白の会」所属
 HP:徳高博子《歌の翼》

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