世界の変へ方     鈴木良明

  • 投稿日:2013年06月28日
  • カテゴリー:短歌

鈴木短歌130628

世界の変へ方       鈴木良明

飲食(おんじき)の果てに生(あ)れたる満足を水に流して食器を洗ふ

平成の空腹は腹が減るでなしこころの空(す)きて埋めむとすなり

野良猫と放置自転車あかつきの路肩に並び月に射たるる

ひもじきが先の筈だが恋猫の夜に入りてバトル狂ほしきまで

根つからの平和主義とは日常を自ら平和でありつづけること

横しまな旗は縦縞に変へてしまふマギー司郎の世界の変へ方

言葉さへ与へられずば幸不幸わからぬ畑の草を引き抜く

自らの美に気づかざるものたちを花とよびては散るをかなしむ

山羊二匹〈そら〉と〈みどり〉と名付けられ草食むすがた沿線にみゆ

にんげんは地中せいぶつ大江戸線地下四十メートルの六本木駅

夜の明けぬ闇の底から坑夫のごと頭(づ)の明かり点すジョガー顕はる

きつければ先ゆくランナーのゼッケンの一桁づつを足して走りぬ

作家紹介

  • 鈴木良明(すずき よしあき)

一九五〇年、茨城県生まれ。
「歌林の会」所属、歌集『ランナーと鳥』

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