生活は勇気 本多真弓
きみの目を見たことのある目をあらふプールサイドに夕景がくる
都バスには昭和のこゑの流れきて次はしののめみやこばしだと
くらべてはいけないものをくらべたいランチしませうふたりきりでも
奥さんをゆづられたときありがたうと佐藤春夫も云つたのかしら
会社では裸足になつたことはない巻き爪のままときをり踊る
くちびるにふれたらをはるれんじやうのとぢこめられてゆれてゐたのか
花の名を覚えられないひととゆく旅のごとしもひとり暮らしは
うたがはれずにすみさうな嘘をつくアメリカンチェリーはひかりをはじく
総ルビのゑほんを読んでゆくやうなくすぐつたさにほどかれてをり
夏服の白さまぶしく風は過(よ)ぎりあなたがつれてゆく物語
作者紹介
- 本多真弓(ほんだ まゆみ)
2004年 「枡野浩一のかんたん短歌blog」に投稿をはじめる
2006年 未来短歌会入会、岡井隆に師事
2010年 未来年間賞受賞
2012年 未来賞受賞