虹の根     古谷智子

  • 投稿日:2013年12月06日
  • カテゴリー:短歌

古谷短歌131206

虹の根     古谷智子

いくたりの死者呑みこみて相貌のいよよ青める秋の高空

丸谷才一、連城三紀彦、天野祐吉 十月の死者みな破調なり

六十五に八十七に八十の死者の無念の嵩(かさ) 反比例

鋭(と)きこころ編みこみいつしか綾織(あやおり)の布の滑(ぬめ)りのごとき文体

紅葉のいまだあはき世去りゆきぬ神無月とは神恋ふ月か

つぎつぎにいのち溶けこみ混沌たる天のるつぼは蜜のごとしも

風邪の神ひつそりすわる喉がらりがらりと開けぬ言(こと)問ふたびに

思ひ浮かべる胸部写真の喉もとの影ほの白し咳きこむたびに

うがひ薬「ガーグル」可笑しそのままの音にころがす夜ごと朝ごと

押しよせる仕事に大波小波ありわらべのやうにつんのめる秋

豪雨より雹にうつりぬブログなる車窓にこころ運ばれてゆく

高速を駆る視野ながれ雨ながれ行く手はるかにかかる夕虹

嬌声のきこゆるごとし虹の橋をつぎからつぎにくぐる車窓に

虹の根をうつすブログのほんのりと靄たつごとし裾ひくごとし

高速道またぐ虹の根あらくさのなかよりたちてあらくさに消ゆ

作者紹介

  • 古谷智子(ふるや ともこ)

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