grief work 田丸 まひる
夏痩せのつめたい膝にふれられるふたり暮らしの小さな棺
心音を重ね合わせて心音をからだのなかに泡立たせたい
石けんの青い匂いをかぎあって息苦しさは生活になる
午後からは雨 秋物のやわらかいノースリーブを勧められても
友達の子どもの話をしたあとの存在しない子どもの話
「結婚は三回くらいしなさい」と占いのひとに手を握られて
育児書を仕事のために積み上げたデスクに伏せてみるそぞろ寒
長き夜のスマートフォンの体温がひとの温度をこえてゆくまで
シリアルを二種類混ぜたシリアルが堂々とある朝の食卓
わたしより先に死ぬって決めているあなたが先に冬になりゆく