河口 齋藤芳生 (かりん)
なかなかに雪の降らねば恋しかりこぼす涙もたちまち乾く
餌台を守らんとする鵯の殺気、されども雀の必死
花鋏の刃の鈍色に抗える寒椿とう一本の意志
叱られて拗ねている子どものような侘助よ雪のふる庭の隅
念力も怪力もなく懐手して見ておれば椿落ちたり
隠しようもなきこころかな喩うれば新雪に今し落ちたる椿
君の手にわたくしの手をあずけたり雪ふりやまぬ河口さびしく
流木のような我らの前に降る雪である 向こう岸が見えない
風雪の一夜明ければ眩しくて河口に君の声のみを聴く
あっぱれな高さを飛翔する鳥を仰げば全き空に舞う雪