短歌   盛田志保子

  • 投稿日:2017年12月03日
  • カテゴリー:短歌

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短歌   盛田志保子

少し気が楽になるから山奥の水場の如し歌を詠むこと

唯一のなぐさめとして焦点のつねに正しい縦書きの歌

大らかに生きたいという願望を持つわたくしに捺される印

咳に疲れ言葉に疲れやわらかい子供の頬に触れている夜

使っても傷まぬものを使うから続くのだろう歌を詠むこと

吹き荒れるうつつの風を聞きながらコップに凪ぐは歌という水

死にたいといえば軽いと諭されて書き直している三十一文字

「探して」と「見て」が悲鳴のようにくる秋陽の中の戸棚をしめる

音楽にのせてあなたに届けたいそれはわたしの言葉ではない

どのような雨風さえも吹き込まぬための蓋つき三十一文字

盛田志保子
1977年岩手県生まれ。未來短歌会所属。

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