偸盗   大辻隆弘

  • 投稿日:2018年04月07日
  • カテゴリー:短歌

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偸盗   大辻隆弘  

砂利のうへの竹あかるくて三月のビルの屋上庭園しづか
わがまみのくぼむところに手の甲を押しあててをり午後のはじめは
昨夜きぞの背のさびしき反りをおもひつつ莢ゑんどうの筋をはづしぬ
はだか木の柘榴にあかき葉は芽ぶき Shame! といはむ一人だになし
ゆふかげは向かうより射し梅の木のしだるる枝のひかりするどし
葦のかたへぎりゆくとき葦の間をく夕つ日に輪切りにされぬ
木蓮の花びらははやかそかなる黄のいろを帯び濁りつつあり
もくれんのさわなる花を揉みしだく風は来てその平たきつら
うらわかき偸盗ちゆうたうのごと息づきぬ桜の坂のなかばまで来て
花影のなかなるわれはおぼめきて川のながれをまばゆしと見つ

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