クユ   木下こう

  • 投稿日:2018年07月07日
  • カテゴリー:短歌

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クユ   木下こう

めぐすりをふたつ買ひたりどちらかは植物になる夏をあゆめば
こなごなになつた塗料をベンチからデニムに移すよろこびながら
葉はむすう花はかぞへてその白をなづきのなかまではこべば残る
しまへびはたまごを呑みこんだのだから踏んで砕いてあげないとだめ 
ぼろぼろに朽ちたり燃えあがつたりする薔薇がいとしき戦士であつた
油ちりばめれば井戸クユのごとき鍋 夕せいれいが顔をうつして
ドリンクをわらつてわたすのが役目いつしようけんめい闇をのぼつて
みみたぶに血がいつちやうから話さない夜をひかつた飲物ぬるみ
あざやかなガラス壺へとうつりこみ…影、キリストのやうにうなだれ
駅の名のひとつひとつにとらはれて(むかうの半月おきてがみめく)

木下こう  
三重県在住
未来短歌会所属
2011年度未来年間賞
歌集『体温と雨』(砂子屋書房 2014年)

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