つくりごと   山川築

  • 投稿日:2018年11月03日
  • カテゴリー:短歌

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つくりごと   山川築

真実の対義語ばかり使ふ日のはじめに飲み下す胃腸薬
ありあけの大気にごれりまたひとつ有精卵が産み落とされて
電柱の影ながながと道に落ち小さきひびに染み込みゆけり
濃緑の丘を離るる気球見ゆ叫びのまへの呼吸は深し
楠木坂コーヒーハウス跡に湧く地下水のおと激しかりけり
十字路の角の耳鼻科の看板に目のなき象が三頭ならぶ
次々に床の隙間へ流れ込むエスカレーターやや軋みつつ
投入が殺人に見えもう一度袋の口を固く結びつ
憤激の去りにしのちにわれの手はタブロイド紙を歪ませてをり
黙すほど鋭くなれる痛みかなざなざなざなと墓地に降る雨

山川 築(やまかわ きずく)
1990年生まれ。インターネット上の歌会サイト「うたの日」で短歌を始める。
2017年、未来短歌会に入会、大辻隆弘に師事。2018年、第64回角川短歌賞受賞。

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