額縁に触れる    椛沢知世

  • 投稿日:2019年09月07日
  • カテゴリー:短歌

tanka2

額縁に触れる    椛沢知世

額縁のつめたさに触れる指さきが同時に壁を指差している
ストロベリーフリーズドライをふりかけて生クリームに白をさせてる
バス停にしずかに並ぶ人々の影をまるめる夏の真昼間
ペットボトルをダンベルみたいに持ちあげて ごめん 猫が逃げてしまった
遠くには救急車の音 五秒後にネット広告スキップできる
薔薇の棘の側面はつるつるとして指は自ら棘先へゆく
プチトマトの湯剥きすっごくあっけない 消したりつけたりする換気扇
足をかけて鉄棒で逆さまになるこのまま眠りにつきたくなった
右に左に風に合わせてかたむけて傘をさしても雨を踏んでる
ビニールした紙袋を提げている人とすれ違う傘を少し傾け

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