左右    魚村晋太郎

  • 投稿日:2019年09月07日
  • カテゴリー:短歌

tanka1

左右    魚村晋太郎

イヤホンをなげ捨てるなら(海がいい)あさの街路を見下ろす高架
川越線に乗るのはたぶん二回目で見知らぬ夏を車窓はひらく
花を買ふのだとおもひたち検索する花屋、スーパー、さびしい駅に
日照雨そばへとはたはむれのこと汗なのか雨なのかわからずぬれてゐた
   午後からは都内へ
蟬時雨ごしにときをりきこえてくるプールであそぶ子どもらのこゑ
わさわさとひらいた莢をたれながらあをぎりの樹が陽をあびてをり
   太田喜二郎の絵をみる
絵画よりひとの疎らな美術館ひえたくうきを矩形にとざし
二十世紀初頭の日射しまぶしみて「赤い日傘」の女たたずむ
点描で描かれてゐる日本の農婦はこの絵、みたのだらうか
名を遂げてのち点描を手放した画家のこころをひくく言ふひと
十ばかり左右あはせてならびゐるピアスをときに後ろからみる
点描のひかりのなかを汗あえて目黒駅まで坂道をゆく
墓の草ぬいてきた指でふれてゐるペーパーカップのつめたいしづく
ぼうつとしたことがしばらくなかつたとぼんやりおもふピアスの谿に
思ひ出ときおくはちがひ雨止みのYUNIKAユニカVISIONビジョンにゆれる秋草

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