シンギュラリティ    竹内亮

  • 投稿日:2019年10月05日
  • カテゴリー:短歌

tanka1005-01

シンギュラリティ    竹内亮

自動改札にかばんを翳す人マヤ文明の鍵のごとくに
夏空に飛行機飛んでゆくような音聞こえおりスケボー通る
信号にテイクアウトの炭酸の氷は早く溶けてゆきたり
わたくしはもっとも暑い場所にいる横断歩道の途中に止まる
AIはかゆくならない雑念のないまま座る考える人
インスタのすべてにいいねを押してゆく苺の飴を配るごとくに
熱風の吹きこむ中へ上りゆくエスカレーター人を揺らして
白色のフリスク揺れる音を聞く夏の日射しに君の手のひら
一匹の蟻がスマホの上にいて守れる約束を守ること
外国の銀行の出す小切手の裏書きのごとリツイートする
故障したと思っておりぬエアコンをつければ自然治癒していたり
個室にてしばし座れば照明は消えてしまってそのままでいる
AIならこんなに怒らなかったろう硝子に映る木々のいらだち
名簿からをのつく名前を捜しおり格関係のような名前を
真夜中の街灯の列いつまでも誰の着陸を待つ滑走路

初出
同人誌「半券」001(2019年9月)

竹内亮
1973年生まれ。2011年から東直子さんに師事。
2019年8月に塔短歌会に入会。
第1歌集『タルト・タタンと炭酸水』(2015年 書肆侃侃房・新鋭短歌シリーズ19)

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